
私もいい歳なのだから「赤ちゃんはコウノトリが運んできてくれるもの」などと本気で信じているわけがない。
だからこそ学生時代は、
「学生だから今子供ができても責任がとれない」
と言い、結婚前はお互いに、
「未婚の状態で子供を作っても責任がとれない」
と言って避妊を徹底してきた。
積極的に子供を作りたいという意思があったわけではないが絶対に子供を作りたくないというわけでもなく、
「いたらいたで楽しいだろうな」
「そういう経験をしてみるのもいいんじゃないか」
くらいには思っていた私が、結婚し、世間的にはとりあえず環境が整っている状況で30代に突入してもなお避妊を続けることはもはや自分自身に対して、
「私は子供を生み育てるには必要な人間的要素がないダメな人間だから作ってはいけない」
と暗に言っているようなものだった。
「子供を作らない人生ルート」は引き続き避妊を続けていればよほどのことがない限り確保できる。
不妊治療などは避妊をやめたあとに考えるべきこと。
避妊を、自分へのダメ出しをやめなければ「子供がいる人生ルート」は開かれない。
「とりあえずコンドームを使うのをやめよう」
私が夫にそう言ったのは、自分へのダメ出し習慣を断ち切る行為でもあった。
出産予定日でもあり、結婚記念日でもあった今日は夫が午後休みをとってくれたので、二人で高級ランチを食べに出かけた。
「お腹の中のベイビーが『二人だけで美味しいもの食べるなんてずるい』って言ってる」
「ずるいと思うんだったら早くこっちに来い。こっちはもう準備ができてるから」
「ずっと『自分はダメな人間だから子供を作っちゃいけない』って思ってた節があったけど、こうして妊娠して出産すれば多少はそういう気持ちも和らぐかな」
「決して無意味ではないとは思う」
正直妊娠したからといって自分が大きく変わったという実感はない。
それでも少しずつ少しずつ、いい方向に変化しているという実感を今味わっている。
去年の秋、妊娠前に執筆した小説です。
関連記事


