
「『一応』作家とモデルとライターをやってます。『全然売れてないですけど』」
2016年春に転職したものの、この仕事を始めてから2年半ほど、私は職業を尋ねられた時にこのように頭とお尻に自分を貶めるような言葉をつけて答えていた。
あの頃の私は「応援」という名目の無関心に苦しんでいた。
男の人からエロいことを言われることならまだ我慢できる。
しかし、
「私は女性の内面を尊重する男です。だから能世さんを応援しています」
と言って近づいてくる男の人から「作品には興味がないです」と言われるのはむしろこいつは私の穴しか見られていないんじゃないかという気分になった。
それに加えて2018年はそれまで付き合っていた同性の友人たちからの過干渉に苦しんだ時期でもあり、彼女たちからの「アドバイス」という名目の粗探しに私はすっかりすり減っていた。
男女共に笑顔で言われる「興味ない」はこの仕事をしている人間にとっては「嫌いだ」よりも殺傷力がある。
相手を尊重するふりをして、相手を自尊心を満たすためのオカズにするようなやつはろくなやつではない。
それは正論ではあるが、私はそもそも自分自身の名乗り方にも問題があったのではないか……とも省みた。
いちいち自分で自分を貶めるような名乗り方をするから私の仕事を自尊心を満たすためのオカズとして使おうとする人間が近寄ってくるのではないか……と。
そう思い至った結果、2018年秋頃、ついに名乗り方を変えようと思った。
「最初は慣れないかもしれない。でも、今後は職業を名乗る時に絶対に自分を貶めるような言葉をつけない」
決意した矢先に東京にいる古い友人からメッセージが届いた。
「今度私の友達が名古屋でこんなイベントやるんだけど、雄妃ちゃんもよければ参加してみて」
それは「100人女子会」の案内だった。
渡りに船と思った私はすぐに参加申し込んだ。
参加するからには名刺を作ろうと思い、初めて自分の仕事のための名刺を作った。
「参加者の誰かが私の作品を買ってくれたらいいな」
という下心があったことは否定はしない。
そして私は今後も人との出会いの場にきっとこの下心を持ち込む。
しかしそれ以上に私は、
「できるだけたくさんの人に、堂々と自分の職業を名乗り、自己紹介をする」
という課題を意識して100人女子会に臨んだ。
実際に堂々と自己紹介をしようとしたが、本当に最初は慣れなかった。
堂々とした態度を心がけながらも、腹の底では自己紹介をするたびに怯えていた。
それでも初めて参加したああいう場で私は50枚の名刺を配ることに成功した。
つまり50人に堂々と自己紹介をすることに成功したということだ。
それは当然私にとって強い自信となった。
今でも私が仕事をしていることを受け入れられず、自尊心を満たすためのオカズとしてしか扱えない人はおり、きっとこれから先もそういう人たちは現れるだろう。
「そういう心の貧しい人たちをも愛し、導くことも私の仕事だ」
多少時間はかかったかもしれないが、最近こう考えられるようになれたのは2018年のあのタイミングで100人女子会に参加したからだ。
今振り返っても、私はあの時のあの会は私にとって非常に重要なものだったと思う。
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