Site Overlay

優しさと自尊心

新婚旅行でフランスに行った時、駅の階段で現地の男性が私の代わりにトランクを運んでくれた。

その男性のことを思い出すと今も温かい気持ちになる。

しかし、そもそも日本の主要都市では観光客が十分満足できる程度のエレベーターであれば設置されているのが当たり前だ。

日本人には思いやりをシステム化する気質があり、もはやそれは、

「『ありがとうと』言われたら負け」

というレベルのもの。

人から「ありがとう」と言われて嬉しいという感覚は人間として当然のもの。

ただ、その感覚を暴走させると自分自身の評価を他人に委ねることになる。

そして人は自尊心がない状態ではそのような一発の快楽を求めるような親切に突っ走ってしまう。

他人からの評価は関係ない。

私は私。

そういう状態でこそ、システム化された思いやりは成り立つ。


毎月10日にエッセイ集『Chocolate』を発行しています。

今月号はこちら。↓