自宅から名古屋のコワーキングスペース・プロコワまでの所用時間は約1時間強。
「仕事をするため」
と言って幼稚園の先生やら自分の母やらに娘のことをいろいろと頼んでようやく時間を確保したにもかかわらず、プロコワに行くとなるとそのうち2時間半近くを電車の中で過ごすことになる。
しかもこの日は駅に着くなりホームから不穏な放送が流れていた。
「踏切の安全確認のため一部列車に遅れが出ております……」
私が乗ろうとしていた列車は30分遅延しているとのこと。
何時までに行かなければならないというものではない。
誰かと打ち合わせなどの予定があるわけでもない。
ただ自分の作業時間が削がれるだけ。
今予定を変更し、引き返して自宅で仕事をすることにすればまだダメージを抑えられるどころか帰宅にかかる時間も作業時間にあてられる。
それでも私はその電車を待って名古屋に向かった。

「おはようございます」
「おはようございます……そういえば能世さん、ちょっとご相談したいことがあって……」
入室時に他の利用者と軽く挨拶を交わせば、そのまま軽い打ち合わせが始まりさらに私の作業時間が減る。
ウォーターサーバーに水を飲みに行けばそこにいる利用者と、
「いつ生まれる?」
「8月下旬です」
「男の子?女の子?」
「ちょうど昨日妊婦健診があって女の子ってことが分かりました」
といった話になりまた私の作業時間が減る。
そもそも「行く」と決めた時点で作業時間が格段に増えるということを期待していたわけではない。
お互い何かとやることがあるという前提の下でのちょっとした挨拶、ちょっとした会話が、普段自宅に引きこもり家事・育児・仕事の勤行に明け暮れる尼僧のような生活をしている私にとって救いになるのだ。




