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春の辛抱

春生まれのくせに春があまり好きではない。

以前夫に、

「ヴィヴァルディの『四季春第一楽章』みたいな、雪が溶け、小鳥が囀り、大地から緑が芽吹く……みたいな春の喜びを私はあんまり実感したことがないんだけど」

とこぼしたところ、

「あれは日本人で言うところの初夏だ」

と返されたことがある。

地面はぬかるんでいるし、気温は不安定だし、おまけに空気は花粉やら黄砂やら黄色い粉が飛び回っていて少しも爽やかではないのが日本の春。

特に今年の春は妊娠の影響も相まって体も気分も塞ぎがちになる。

先の日曜日も妊娠によるものなのか少し前の胃腸風邪の影響なのか、布団から起きあがることができず、午前中は夫に娘の世話を任せてだらだらぐずぐずと寝るに寝れない時間を過ごしてしまった。

階下から聞こえる娘の足音やそれを追いかける夫の声に耳を澄ませ、二人が昼食を終えた頃、ようやく私も多少は食事をしなければという気分になり、リビングに下りるとちょうど娘のトイレの手伝いを終えた夫が、

「大丈夫?スープ餃子あるけど」

と、声をかけてくれた。

私は勧められた通り、温め直したそのスープをすすりながら、窓の外の黄色い空を眺めてため息をついた。


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