
旅人はよくこう語る。
「自分がこれまで常識だと思っていたことは常識ではなかった」
多様性だの個性の尊重だのと叫ばれる昨今だからこそ、この旅人談は「広い視野を持つことの大切さ」程度にとどめておくのが健全だとつくづく思う。
これまでいた社会とは別の社会に行くのだから「自分がこれまで常識だと思っていたこと」が「実は必ずしも常識ではない」と気づくのは実は当たり前のことでしかない。
例え旅先で自分にとって新鮮な体験をしたとしても、その地にはその地なりの「常識」があり、その地で暮らしている人間はその「常識」を弁えた上で生活している。
「ここが気に入ったから旅をやめてここに定住しよう」
と思うのであればその地の常識を知らなければならず、定住せずに旅人として過ごすにしてもやはりその地の常識を理解していなければ「旅の恥はかき捨て」るかのような振る舞いをし、顰蹙を買うことになる。
常識を覆すような新しい発想はその場での常識を知り尽くした上でしか成り立たない。
奇法は常法の上に成り立つ。


