
「子供の頃に飾ってた雛人形あるけど飾る?」
母からのLINEに「飾る」と返信したその週末、父が雛人形が入った箱を自宅に運んできてくれた。
「雛人形なんか初めて触ったな」
男兄弟で育ってきた夫は雛人形を物珍しげに人形をさまざまな角度から眺めながら並べていく。
私が最後にこの雛人形を見たのは15年ほど前のことだったか。
あの時片付ける際、両親はもちろん防虫剤などを箱に一緒に入れていたらしく、実際箱の中には古くなった防虫剤の袋が入っていたが、それでもところどころに傷みが目立つ。
三人官女の柄杓、五人囃子の笛、左大臣の刀、仕丁のほうきなど、小物の失せ物も多い。
それらはきっと、何度も飾り、その度に片付ける度に一つ一つどこかにいってしまったのだろう。
「このような形で再びお目にかかることができ嬉しく思います」
それでも娘の初節句のために夫と並べたひな壇の前に座り、雛人形との再会を果たす。
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